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ブックレビューです。
『山本五十六』 半藤一利著
内容的には分かりやすく、簡潔にまとまっていて、いい本だと思います。
連合艦隊司令長官として日米戦争を指導した山本の、思想や苦悩がよく伝わってきます。
Image284.jpg

こういう歴史物を読むといつも思うんですよね、歴史って皮肉だなぁと。
そしてやっぱり「歴史は人なり」って思うんです。
ご存知の方もいるかと思いますが、山本五十六は最後まで日米開戦に反対していました。
その理由は極めて簡単です。
日本と米国が戦ったら、日本は勝てないと考えていたからです。
極めて合理的な判断でしょう。
いや日本が米国とやって、まともに勝てると考えた参謀は陸軍にも海軍にも多くはないと思います。
では何故パールハーバーをやらなきゃならなかったのか??
この辺りを考えるには、日独同盟問題の辺りから考えていくと様々なことが見えてきます。

平沼騏一郎首相の時代に日独同盟が起こります。
ドイツから同盟の打診を受けた日本が、それを受諾するかどうかを巡って大激論になります。
基調としては陸軍は同盟賛成、海軍は同盟反対でした。
しかし実情はそんなに単純なものではなく、様々な意見が噴出し、結局結論を出すまでに250日以上もかかっています。
日独同盟を結ぶこと、即ちそれは日米開戦を意味します。
結果的に日本はドイツからの同盟打診を受諾します。
当時ドイツは電撃作戦でポーランドやフランスを次々に落としていき、破竹の勢いでした。
また独ソが不可侵条約を結びます。
このことによって平沼内閣は総辞職になるのですが、独ソ不可侵条約によって日本の参謀たちが日独同盟へ流れていったといえるでしょう。
日本は日独伊ソによる4国同盟構想を持っていたのです。
しかし1941年6月に独ソ戦が始まります。
この時点で日本の戦略は根本的に見直される必要があったでしょう。
日本の戦争戦略、それは日独伊ソによる同盟および、英国の敗北により米国の戦争継続を不可にするというものでした。
けれども日本の参謀たち独ソ不可侵条約が侵され、4国同盟構想が崩壊したのにもかかわらず、ドイツが英国に勝ち、ソ連も下すと判断しました。
皮肉なことに日本が真珠湾に奇襲攻撃を仕掛けにいった、間もないころにドイツ軍はソ連軍に敗れ全面撤退を始めています。

日本の戦争史を見ていくと何ともいえない気分になりますね。
日本の軍事機関を含め、内閣制度にも制度的に問題がありすぎるんですよね。
組織内の対立や派閥抗争はよく指摘されるところですけど、全体の調和をとるシステムが全くない。
陸軍と海軍がまず予算争いから戦略観の違いまで、全く整合性がとれていない。
そもそも同じ帝国軍の陸軍と海軍で仮想敵国が違うのがありえないでしょ。
また陸軍は陸軍省と参謀本部、海軍は海軍省と軍令部に組織が分断され、ある意味で二重の齟齬をきたしていた。
肝心のトップである大元帥は基本的に頷くのみ。
僕は日本が戦争に勝てなかった要因に制度的なものをかなり重視しますね。

ただ最近こんなことも思うんですよね。
結局人間性の問題も大きいのかなぁと。
当時の日本に、もっと自由闊達な議論が出来て、合理的な判断が整合性を持つような文化的土壌があれば、歴史は変わっていたのかなぁと。

この『山本五十六』を読んでこんな風に思いました。


ってか僕卒論のアウトラインを水曜までに出せって急に言われてピンチなんですよね・・・(;一_一)
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  • 無題
つだ 2008/09/08(Mon)01:29:52 編集
私がこないだ読んだ「ほんとうの環境問題」て本に「日本は石油を得るために太平洋戦争を始めた」って書いてあったんですけど、どう思いますか??
  • 無題
あいち 2008/09/08(Mon)12:21:58 編集
う~ん,「石油を得るために日米開戦になった」とも言えなくはないね。
海軍軍令部の作戦的にも長期戦になることを想定して油田攻略か掲げられてるし。
でもニュアンス的には「石油のリミットがこれだけしかないから,米国と戦うなら今やるしかない」っていう感じのが近いと思う。
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