奇跡と矜持～２～

人々の光、それは若干16歳の少年だったのです

その名を天草四郎と言いました。
本名は益田四郎時貞であります。

人々は「世に神童が現れた」と歓喜します。
四郎は生活の苦難から心を痛めた人々を癒していったのです
彼は幼き頃から、俊明で、基督教の狭義をマスターし、16歳の頃には既に祭礼を行える器量を持っていたとされています。
また言い伝えによれば不思議な術を用いて、人々を驚かせたとも言われています。

かつてキリシタン大名が治めていた天草や島原地方には、江戸時代の初期には大勢の基督教信者がいました。
しかし三代将軍家光は、1612年にキリシタン禁令を、その2年後に伴天連追放令を発布して鎖国政策を押し進めました。
基督教の迫害が本格化していくのです。
信者たちは残酷な拷問を加えられて棄教を強制されました。
また宣教師たちはマカオへ強制送還されることになります。
こうした幕府の徹底した迫害によって、多くの基督教信者たちは表向きには信仰を捨てました。
しかし人の心は法令にって縛れるものではありえないのです。
多くの人々の中で基督教は生き続けたのです。

四郎はその秀でた容姿と基督教の魂に響く言葉によって人々のカリスマになっていくのです。
人々は四郎の言葉によって生きる事の意味について考えたことでしょう。
そして重税に加えて、更なる悲劇が襲います。
天候異変や台風が続き、農作物の不作が続いたのです。
もはや領主に年貢を納める事は到底適わなくなってしまいました。
人々は路頭に迷ってしまう事になったしまっていたでしょう。
四郎という存在がいなかったならばです

しかし彼らは立ち上がったのです。
幕府という大きすぎる相手に、戦うことを決意したのです。
この時代、一揆を起こしたら、どうなるのか。
その事は皆重々に理解していたはずです。
一揆を起こした者は皆殺しにされ、その家族にさえ危険が及ぶ可能性がありました。
それでも彼らは戦うことを決めたのです。
絶対に勝てない相手に反旗を翻し、人々は誓ったのです。
信仰という大儀に戦う道を選んだのです...


<続＞